【コラム】吉原英雄『版画集『ペット・ショップ』より 短毛犬』を担当して

 

私は今回の博物館実習で、吉原英雄の『版画集『ペット・ショップ』より 短毛犬』(1978)というリトグラフ作品を担当した。

実習の冒頭で誰がどの作品を担当するかを決めた際、私がこの作品を選んだのは「犬が4匹もいるから」という単純な理由からであった。私は猫も犬も大好きである。

 

作品の解説文を書くために吉原について調べていて驚いたことがある。それは、吉原が広島県因島市(今の尾道市)出身で、若い頃に岡山県の大原美術館に何度か足を運んでいたということだ。吉原は大原美術館に展示されているポール・セザンヌの『風景』に衝撃を受けたのだという。

大原美術館とは、岡山県倉敷市にある日本最初の私立西洋美術館である。私は岡山県出身で、大原美術館には幼い頃から数えきれないほど足を運んできた。吉原が衝撃を受けたというセザンヌの『風景』も見たことがある。学校の遠足で大原美術館に行ったこともあれば、母親と二人で行ったこともあった。進学で岡山を離れてからも、帰省時にふらっと足を運んでいる。

つまり私にとって大原美術館は、日常にとても近い、思い出のつまった美術館なのである。まさかそのような美術館の名前がここに出てくるとは思わず、私は一気に吉原という版画家について興味を持つようになった。描かれている犬がきっかけで選んだ作品ではあったが、この作品を担当できて良かったと思う。

 

今回の実習で作ったキャプションには、作者名と生没年の下に出身地も記載されている。デザイン班いわく「自分と同じ出身地の作家がいたら親近感が湧く鑑賞者もいるかもしれないから」という狙いがあるそうである。大原美術館という共通点をきっかけに吉原への興味が増した私は、この狙いはいささか外れていないのではと思う。ぜひキャプションにも注目していただきたい。

最後に、Wordへ無造作に打ち込んで提出したキャプションや解説文を、素敵なデザインへ落とし込んでくださったデザイン班の方々には感謝したい。


N.M.

 

参考:ふくやま美術館(2005)『吉原英雄:ポップなアート』, 双葉印刷有限会社

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