実習終了のご挨拶 リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ 9月 05, 2022 展示「リトグラフ版画の世界 その歴史と現在」は無事に終了いたしました。コロナ禍の実習ということでイレギュラーな部分もありましたが、大変有意義な実習・展示になったと思います。来館してくださった方々にお礼申し上げます。このブログの更新をもって広報業務も終了とさせていただきます。誠にありがとうございました。E班(広報班)一同 リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ コメント
鍔本達朗(1952- )《In Black 85-5》1985 年、リトグラフ 8月 23, 2022 版画は「黒に始まり黒に終わる」といわれるように、黒が基盤となる芸術である。本作「 In Black 」シリーズは、この黒を効果的に用いた作品群であり、今回の展覧会で展示される「 In Black 85-5 」もそのうちの一つである。 この作品はどのような世界を描写しているのだろうか。深海を表していると感じる人もいれば、宇宙を表していると感じる人、若しくはまた別の世界を想像する人もいるかもしれない。黒い背景のなかに彩度を抑えた色調のモチーフがうかび上がり、厳かで幻想的な世界を作り上げるこの作品は、見る者に多様な解釈を与えるだろう。さらに近づいてみると、モチーフの中に日本美術を思わせるような線が走っているのがわかる。本作品は、一見西洋美術的な秩序を感じさせるが、その中の無造作な線が作品の魅力を増幅させ、独特の世界を形作っている。細やかな筆致や巧みな色遣いは、リトグラフという版画技法が十分に活かされた結果と言えるだろう。 作者の鍔本達朗は愛知県出身の版画家である。鍔本は武蔵野美術大学にて版画を学び、パリに留学してその技術を磨いた。石田財団芸術奨励賞をはじめとした多くの賞を受賞している。現在は碧南市の市議会議員を務めている。 参考 中日新聞 朝刊 1990 年 5 月 9 日 県内版 16 頁 「空間と色彩ユニーク 石田財団芸術奨励賞 牛田明・鍔本達朗展」 中日新聞 朝刊 1990 年 12 月 15 日 県内総合版 17 頁 「詩や現代美術で活躍 碧南在住3作家が出版と受賞祝賀会 あす、音楽演奏会も」 中日新聞 朝刊 2001 年 10 月 4 日 西河総合版 21 頁 「親しみと前衛 陶芸と石版画 高浜、碧南で作品展」 続きを読む
【コラム】吉原英雄『版画集『ペット・ショップ』より 短毛犬』を担当して 8月 25, 2022 私は今回の博物館実習で、吉原英雄の『版画集『ペット・ショップ』より 短毛犬』( 1978 )というリトグラフ作品を担当した。 実習の冒頭で誰がどの作品を担当するかを決めた際、私がこの作品を選んだのは「犬が 4 匹もいるから」という単純な理由からであった。私は猫も犬も大好きである。 作品の解説文を書くために吉原について調べていて驚いたことがある。それは、吉原が広島県因島市(今の尾道市)出身で、若い頃に岡山県の大原美術館に何度か足を運んでいたということだ。吉原は大原美術館に展示されているポール・セザンヌの『風景』に衝撃を受けたのだという。 大原美術館とは、岡山県倉敷市にある日本最初の私立西洋美術館である。私は岡山県出身で、大原美術館には幼い頃から数えきれないほど足を運んできた。吉原が衝撃を受けたというセザンヌの『風景』も見たことがある。学校の遠足で大原美術館に行ったこともあれば、母親と二人で行ったこともあった。進学で岡山を離れてからも、帰省時にふらっと足を運んでいる。 つまり私にとって大原美術館は、日常にとても近い、思い出のつまった美術館なのである。まさかそのような美術館の名前がここに出てくるとは思わず、私は一気に吉原という版画家について興味を持つようになった。描かれている犬がきっかけで選んだ作品ではあったが、この作品を担当できて良かったと思う。 今回の実習で作ったキャプションには、作者名と生没年の下に出身地も記載されている。デザイン班いわく「自分と同じ出身地の作家がいたら親近感が湧く鑑賞者もいるかもしれないから」という狙いがあるそうである。大原美術館という共通点をきっかけに吉原への興味が増した私は、この狙いはいささか外れていないのではと思う。ぜひキャプションにも注目していただきたい。 最後に、 Word へ無造作に打ち込んで提出したキャプションや解説文を、素敵なデザインへ落とし込んでくださったデザイン班の方々には感謝したい。 N.M. 参考:ふくやま美術館( 2005 )『吉原英雄:ポップなアート』 , 双葉印刷有限会社 続きを読む
東谷武美(1948- )《日蝕 O》1985 年、リトグラフ 8月 23, 2022 距離を取ってこの作品を眺めたとき、何が描かれているのかわからない。画面は暗く、赤と黒の組み合わせから不気味に思うこともある。担当者ははじめ、台の上に赤子が蹲っているのだと思っていた。 さて、作品名は〈日蝕 O 〉、モチーフは氷である。作者の東谷武美は日蝕シリーズとして、何度も氷が溶け行くさまを作品としている。 それを知ってから近寄り、角度を変えて眺めると浮かび上がるものがある。 中央下の白い線は、氷の塊が溶けだして流れた水だろうか。氷塊の周りには、角度によって反射して見える蒸気のようなものが存在している。赤い部分は、蓄えられた熱だと考えることも出来る。この作品では、物質の三態である、固体・液体・気体が表現されているのである。作者はエネルギーを常に意識していたという。物質の状態変化というエネルギーを必要とする移り変わりによって、目には見えないはずのエネルギーを表現しているのではないだろうか。 続きを読む
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