加納光於(1933- )《稲妻捕り PF.no.8》1977 年、リトグラフ

 


《稲妻捕り》は、銅版画、オブジェ制作を経て、加納が初めてリトグラフに挑戦したシリーズである。初期のモノクロームの時代を終え、本シリーズでは色彩が立ち上る。その中で、《稲妻捕り PF.no.8》は抑え気味な色彩と淡い色使いが特徴だ。作品中に見える、博物誌から切り取られたような図は、加納作品の多くに登場するテーマ。親交の深かった詩人で美術評論家の瀧口修造の影響を受けたデカルコマニー的手法が使われている。もやもやとした色彩の中を、稲妻や毛細血管を思わせる細い筋が走る。眺めていると、一瞬の動的なイメージが伝わってこないだろうか。加納は、瞬時のイメージを留める方法に拘った。

加納光於(1933-)は、銅版画、メタルプリント、オブジェ制作、リトグラフ、油彩画と様々な領域に取り組んできた作家である。バーナーで溶解させた亜鉛合金を版にそのかたちを紙に写し取るメタルプリントなど、従来の手法に手を加えた実験的手法により独自の世界を切り開いた。

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