【オリジナル記事】見るものすべてがアート~金沢21世紀美術館

 

皆さんは美術館というとどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?特別芸術に興味のない方であれば、暗い、静か、堅苦しい、鑑賞しても作品が理解できないというネガティブな印象を抱いている方が多いかもしれません。

しかし、芸術を見るときは必ずしも対象を完全に理解する必要はありません。日本を代表する評論家である小林秀雄などが指摘するように、芸術を見るうえで大切なのは論理ではなく感動、すなわち感情が自然と動くことにあるのです。今回紹介する金沢21世紀美術館はまさにそんな「感動」を体現する美術館なのです。

                                   https://tabi-mag.jp/is0332/

 金沢21世紀美術館は2004年に現代美術を収蔵する美術館として建てられました。妹島和世+西沢立衛/SANAAによって設計された円形、銅ガラス張りが特徴的な建屋はどこ

からも正面として入場できるようになっており、コンセプトであるである「まちに開かれた公園のような美術館」を体現しています。

 公園というコンセプトにふさわしく、屋外には自由に鑑賞し遊ぶことのできる美術作品、遊具が置かれています。代表的なものをいくつか挙げてみます。


                      https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=30&d=10

 『カラー・アクティヴィティ・ハウス』は色の三原色の色ガラスの壁が一点を中心に渦巻き条のパビリオンを形成する作品で見る場所や何に入っている人や物によって色合いが変化する人気のフォトスポットです。


                    https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=30&d=6

 『ラッピング』は中に子供が入って遊ぶことが出来るように設計されたパビリオンで、パイプとメッシュによって作り出される透過性が魅力的です。


                     https://www.kanazawa21.jp/file.php?g=30&d=2&n=mainimage&gp=&lng=j&p=1
 『アリーナのための クランクフェルト・ナンバー3』は12個のチューバ状の筒からなる作品です。地中を通る管が2個ずつペアでつながっており、伝声管の役割を果たしているという単純なつくりですが、このペアは必ずしも隣り合ったもの同士であるとは限らず、思わぬところから声が出てくるという面白さがあります。

                                                                                                          https://life-designs.jp/webmagazine/kanazawa21/
                                                              https://kanazawa-tourism.net/21century-museum/pool/
 館内にもいくつか恒久展示作品があり、レアンドロ=エルリッヒによる『スイミング=プール』は金沢21世紀美術館で最も有名で人気のある作品の一つです。外側から見ると波立つプールの様に見えますが、実際にはガラスの上に10cmの厚さの水が張られているだけであるため、プールの内部に入ることが出来るようになっているため、地上から内部の人を、プールの中から地上の人を水越しに眺めることが出来ます。なおこの展示は非常に人気があり、プール内部に入るには予約が必要なので中から写真を撮りたい方は注意しましょう。

                           https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1800 
   金沢21世紀美術館が他の美術館と最も異なるのは常設展示よりも複数同時並行での現代美術企画展に重点を置く点でしょう。現代美術の中でもまだ評価の定まっていないものに関しても精力的な展示を行っており、美術を理解しなければ鑑賞する意味がないとする固定概念から脱却した鑑賞体験を経験することが出来ます。本記事執筆時(823日)では、『「ひとがた」をめぐる造形』、『ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ:どこにもない場所のこと』など7つの展示が同時並行で行われています。どの展示でも通常の美術館とは全く異なる鑑賞体験が楽しめるはずです。

 現代美術というと、何かよくわからない抽象画、意味不明なインスタレーションなど、絵画、彫刻、工芸などそれ以前の芸術作品よりもアレルギーを感じる方も多いかもしれません。現代美術の生みの親、マルセル=デュシャンによれば現代美術は「作品を起点として鑑賞者が思いを巡らし、そして鑑賞者の中で完成される」ものと定義されます。要するに捉え方に正解はなく、作品を見て生まれた各々の感情によって作品は完結するのです。つまらないと思えば素通りするもよし、少し興味を惹かれたらさらに思索を巡らせるという見方でもよいと思います。

                                      https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=11&d=1

実際に金沢21世紀美術館に足を運んで、その論理ではなく人間の奥底の感性に直接訴えかけるような作品の数々を鑑賞し、美術に対する高尚で堅苦しいイメージを払拭していただければ幸いに思います。

参考

・金沢21世紀美術館https://www.kanazawa21.jp/

・This is Media「現代アートとは?アートの歴史から見る現代美術の楽しみ方」https://media.thisisgallery.com/20220290




R.S

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