【コラム】“変わる”博物館と博物館実習

 

 コロナ禍において最も有効な感染対策は、密閉・密集・密接のいわゆる三密を避けることとされ、人が一堂に会することを忌避するようになった。2年前の全国一斉の緊急事態宣言発出時には、多くの博物館(美術館・文学館・水族館含む)が臨時休館に追い込まれたが、その間、博物館は自宅でも展示を楽しめるよう、YouTubeや自館のHPのコンテンツを充実させ、それは休館が明けた今でも新しい博物館の形として続いている。

 コロナによってのみならず、博物館の教育活動は、様々に変革を遂げつつある。博物館というと、ただ行って観て終わりというイメージをお持ちの方も多かろうし、それに伴って博物館の「教育活動」という語に疑問を持たれた方もいるかもしれない。最近では、博物館の展示品の撮影や手で触れることを解禁している館も多い。これには20代後半の筆者も、随分と驚かされたものだ。加えて、展示品の脇のキャプションでは説明しきれないことを、QRコードで埋め込んで補足できるようにするなど、スマホを活用した展示も増えつつある。

そして、博物館の教育活動として、近年脚光を浴びているのが「対話型鑑賞」である。ご存じだろうか。これは主に学芸員などスタッフがファシリテーター(司会)となって、参加者の自由な視点や発言をその場の全員で共有し、また新たな視点や発言を促していく…という鑑賞の方法である。本ブログで紹介されている博物館実習においても、対話型鑑賞は取り入れられており、8/25に実施されている。

博物館実習というと、十年一日の変わり映えがない授業だと思われる方もいるかもしれない。しかしコロナ禍に限らず、アクティブラーニングの隆盛なども相まって、博物館が自主的に変化しようとしていることは、案外知られていないようにも思われる。このような変革の時期にあっては、博物館の実質である学芸員養成のあり方もまた、変わってきつつある。


(N.M.)

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